クラシック音楽と現代音楽の比較

クラシック音楽とは、今から数世紀前にさかのぼり、モーツァルトやベートーヴェンなどの音楽家が活躍した時代に作曲されたものを指します。クラシック音楽の学習では、即興的に演奏するのではなく、古典的な作曲を分析し演奏することを通して学んでいきます。クラシック音楽のプロとしての演奏に求められるのは、熟練した所見演奏や合奏の技術、音楽調性や和声の深い理解、ピリオド奏法(作曲者の生きていた時代の演奏方法)をはじめ特定の時代、作曲家、作品固有のスタイルや音楽用語に精通していることです。これらはどれもクラシック音楽の演奏家にとり必要不可欠な素養です。

 

現代の音楽はクラシック音楽とは著しく異なっています。ジャズがニューオリンズで発祥したと推定される1920年代、その新しい音楽の誕生が音楽文化に革命をもたらし、即興演奏時代の幕開けとなりました。ジャズはクラシック音楽と全く正反対に対峙するものと位置づけられます。クラシック音楽では即興演奏が意図されていない一方、ジャズは即興演奏自体を追求したものです。ジャズの発祥の後、イージーリスニングのジャンルが確立され、その中にポピュラー音楽が定義されました。そして70年代になると、プログレッシブロックの時代、レトロの時代となりました。今日ではR&B、ラップ、ヘビーメタル、ニューエイジ、JーRockなど、数多くの音楽ジャンルが存在します。大衆向けがある一方で、オルタナティブなものやさらに音楽的に理解困難なものもあります。これらのジャンルを結びつける共通の糸は音楽の即興演奏です。

 

伝統的なクラシック教育において即興演奏はほとんど教えられる事がなく、そのため多くのクラシックピアノ奏者にとり、頭で思いつく音楽を曲として耳で演奏する事は困難あるいは非現実的だと感じられます。それよりもむしろ、音数が多くリズムが非常に速い曲を自在に弾きこなせる事こそが素晴らしい演奏者の条件だと認識するのが一般的でしょう。例えば、グレード8の資格を持つ一般的なクラシックピアノ奏者の演奏は素晴らしいものに違い有りません。しかし、簡単な「ハッピーバースデー」の曲を即興で演奏するよう頼まれたとしたら、その人は躊躇するのではないでしょうか。目の前に楽譜がないからです。もちろんクラシックピアノ演奏を否定するのではありません。ここでお伝えしたいのは、楽譜に基づく音楽の演奏能力だけではミュージシャンシップの全てを網羅するのに十分ではなく、即興演奏という新しい奏法が音楽表現の幅を大きく広げてくれるということです。全ての音楽演奏家、特にクラシック音楽を学んだ演奏者にとって、即興演奏そして耳で演奏する技術は習得可能であり、それをぜひ学んでほしいと願っています。